本研究は、非破壊で試料調整を必要とせず、さらに短時間の測定で分析が可能な即発γ線分析を、コンクリート中の塩化物イオン濃度分布の測定に適用することを目的として基礎的な検討を行ったものである。本研究では、所定の塩化物イオン濃度に調整したモルタル板を組み合わせた供試体を用いて、即発γ線計数比と塩化物イオン濃度の関係およびその関係に及ぼすモルタル板の深さ方向に関する位置の影響を調べ、さらにそれらの関係から、異なる塩化物イオン濃度のモルタル板を組み合わせた供試体の塩化物イオン濃度分布が推定できるのかを検討した。 本研究の結果をまとめると次のようである。(1)即発ガンマ線計数比と塩化物イオン濃度は比例関係にあり、即発ガンマ線計数比は測定対象物が表面から深い位置になればなるほど指数関数的に減少する。(2)塩化物イオン濃度分布を推定するための位置の影響を考慮した即発ガンマ線計数比と塩化物イオン濃度の較正曲線を提案した。(3)表面の塩化物イオン濃度を既知とし、塩化物イオン濃度分布を仮定することにより、即発ガンマ線分析を用いて非破壊で塩化物イオン濃度分布の推定が可能である。 なお、本年度の得られた結果から提案した方法では中性化や雨水の影響によって表面付近の濃度が極端に低くなっているような分布に関しては浸透深さを過大評価することになり、また、内在塩化物イオンが存在する場合には過小評価となる。次年度以降はこの点についての改善とオンサイト計測に関する装置などの検討も行なう予定である。
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