研究概要 |
本研究は、自然堆積粘土地盤に海溝型地震が発生した場合を想定し,高精度の被害予測手法を構築することを目標にしている。そのために,自然堆積粘土が持つ脆性的な破壊特性が,繰り返し載荷時にどのような挙動となって現れるのかを正確に観察し,それをモデル化することに重点を置いて研究をすすめている。研究初年度の平成19年度は,繰返し単純せん断試験装置の開発をまず行った。繰り返し三軸試験では,圧縮・伸張の繰り返しによって過大な変形履歴が加えられることによって,鋭敏粘土の正確な純粋せん断挙動が観察できない難点があるために,単純せん断試験が有利であると考えた。また,チューブサンプリングで採取した試料を用いるため,直径6cm,厚さ3cmの供試体での試験が可能であることも重要である。試験装置は既存の単純せん断試験装置をベースにして,高精度な繰り返し載荷を可能とするため,パルスモーターによる載荷機構に変更するとともに,計測には垂直・水平ともに内部ロードセルを設置した。具体的な実験は,既往の三軸試験によって力学特性が比較的よく分かっている繰返し粘土を用いて,単純せん断試験機によるキャリブレーション試験を実施した。これにより,三軸試験では得られない純粋な繰り返し単純せん断挙動を観察できることが確認できた。一方,有限変形理論に基づく水-土骨格連成解析を用いて,単純せん断試験のシミュレーションを実施し,今回採用した供試体を取り囲むスリップリング式の側面拘束条件によって,単純せん断変形モードが成り立つことを解析的に示した。次年度は実際に採取した自然堆積粘土を用いて実験を行い,鋭敏粘土の繰返し変形・強度特性を把握するとともに,鋭敏粘土の詳細な繰返し弾塑性モデル化の構築を行う。さらに,それを用いて数値解析を実施することにより,海溝型地震時の被害予測手法の構築を行う。
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