研究概要 |
河川における砂礫移動の追跡調査に用いるために,砂礫にマイクロチップを埋め込み,個々に固有番号を与え,肉眼に拠らずその位置観測が可能となるシステムを構築した.本研究で用いたICタグシステムは,タグの読み取りに使用する使用周波数帯が水の影響を受けにくい(134.2kHz)点と,ICタグは電池を持たず読取器側からから受ける電磁波により電力が供給されるパッシブ型である点が特徴である.装置は,(1)ICタグ(ガラス封入型:長さ32mm,直径3.2mm),(2)アンテナ(715×270×16mmの平面形状のゲートアンテナ),(3)読取器,(4)ロガー(ノートパソコン)により構成される.ICタグを読み取る事が可能なアンテナとICタグとの距離や指向性等の読取特性を把握するための各種試験を実施した.その結果,ICタグ単体では読取距離最大30cm程度,試料速度V=4.0m/sec程度までは読取可能であること,試料が読取範囲に複数存在した場合は困難であること,機器としては流下,衝撃などに対して十分な耐性を有していることを明らかにした.また,本調査手法を実用に供するために,アンテナを河床に定置する定置型装置と,アンテナを河床上にかざして河床にある試料を捕捉する追跡型装置を考案した.これらを試作し,実際に真名川ダム(福井県大野市)のフラッシュ放流にあわせて設置し現地河川試験を実施した.このうち追跡型装置は,河床中の土砂にアンテナをかざし,掃流された試料の存在を確認するものであり,ダムからの放流およびその後の出水により,ICタグを埋設した礫(直径40mmおよび70mm)の移動経過について,GPSを組み合わせて容易に特定する事に成功した.
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