本研究では、カルシウム添加によるフッ素の沈澱除去プロセスからの上澄水を対象に低圧逆浸透膜ろ過を行う。一般に、フッ化カルシウムCaF2は逆浸透膜の表面に強因に付着し、膜ファウリングの原因となる。通常の逆浸透膜ろ過プロセスでは、フッ素は循環水側に保持されるためろ過とともに循環水中て濃縮し、これと同時にカルシウムも循環水側で濃縮されるために、ろ過の進行とともにフッ化カルシウムCaF2が過飽和となり、膜表面に析出してファウリングを起こす。さらに、カルシウムを添加してフッ素の沈澱を行うプロセスでは、CaCO3が析出して膜汚染を起こす可能性がある。また、半導体などの排水中には高濃度のシリカが含まれている可能性か高い。そこで本研究では、人工的に調整した排水を用いて、逆浸透膜の汚染とフッ素の阻止性との関係について調査を行った。逆浸透膜によるフッ素の阻止性は、膜汚染の進行とともに変化するが、阻止性が上昇する場合と低下する場合がある。このため、ろ過実験修了後の膜を取り出して、膜表面に付着したフッ化カルシウムの量をろ過実験条件ことに測定する他、膜表面の官能基の存在状態について、ART-FTIRを用いて観察することで、膜表面に付着した汚染物質は主に、シリカとCaCO3であることを明らかにした。さらに、フッ素の膜面透過をモデル解析することにより、膜面に形成されたゲル層の透過性の違いが、フッ素除去率の変化に影響していることを示した。
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