研究課題/領域番号 |
19656135
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 弘之 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (20114093)
|
研究分担者 |
大宮 喜文 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (10287469)
松山 賢 東京理科大学, 総合研究機構, 講師 (10307704)
|
キーワード | 乾式間仕切壁 / 石膏ボード / 載荷試験 / 加熱試験 / 地震後残留変形角 / 崩壊温度 / 相互作用 / 熱弾塑性解析 |
研究概要 |
地震によって架構が永久層間変位を被った場合の鋼構造物の耐火性能に着目する。構造部材の地震による損傷は架構の火災時鉛直力支持能力に影響する。一方、内壁は、火災時、区画部材として延焼を防止する役割を担うから、壁の地震による損傷は火災に対する区画保持能力に影響する。このような震害を被った鋼構造物が直後に火災を受けることを想定して、その終局的な耐火性能を明らかにすべく、次の2点に着目する研究を試みた。 1.地震によって損傷を被った内壁の区画保持性能はどれほど劣化するかの実態を実大加熱試験によって把握する。 2.地震によって永久層間変位を被った鋼架構の崩壊温度を、理論的・解析的に明らかにする。 代表的な内壁として、石膏ボード製の乾式間仕切壁を取り上げ、実大壁体3体を試験体とする実験を試みた。壁の四辺は主架構の柱・梁に接するとして、試験体の四周には剛な枠を設けた。壁四辺と剛枠の間に変形吸収材(クッション)を設けたものを含めた。まず、この壁を常温下で面内にせん断変形させる。その大きさは、地震被害を想定して、無被害・1/75・1/40の3種とした。せん断試験を実現すべく、別途、加力治具を製作した。次に、この被災壁を壁炉に配し、当該壁の一方の面に面する炉内空間の温度を標準加熱曲線に一致する推移で上昇させて壁を加熱した。実験は東京理科大学火災科学研究センター実験棟(千葉県野田市)で行った。実験により次の知見を得た。(1)常温下の面内せん断に対して、壁体は面外に大きく座屈する。また、壁体が損傷する前に鋲類が弛む。これらが面内変位を吸収して、壁自体の歪はあまり大きくならない。4隅の圧縮を受ける壁面が僅かに圧壊の様相を呈するに止まる。一方、四辺と枠の間には局部的に隙間が発生する。(2)加熱試験に際しても、壁体は、火災室側の面外に大きくたわむ。(3)3体の耐火時間に本質的な差は見られない。耐火時間を支配するものは、予め与えた損傷ではなく、裏面側ボードの収縮による目地の開きである。 地震によって層間の永久変位を被った鋼架構の崩壊温度を有限要素解析と理論解析の両面から求めて次の知見を得た。(1)永久変位が大きいほど、柱が細長いほど、また、柱の軸力比が大きいほど架構の崩壊温度は低下する。(2)耐震設計を施される我が国の鋼架構の場合、上記の崩壊温度の低下は僅かである。(3)この種の問題の崩壊温度は、簡明な閉形解によって捉えることが出来る。
|