研究課題
本研究は、主に一般的な中低層建物を対象として、耐震性能と構造被害の評価にむけた地震応答観測・分析手法の検討を行い、それに基づいて、大地震時の多数の建物被害情報を効率的に収集するための地震時建物挙動モニタリング体制の実現可能性を示すことを目的とする。今年度を含む研究全体の具体的な成果は以下の通りである。(1)中低層建物等の常時微動観測とデータ整理これまで実施した多数の常時微動・強震観測結果の整理と再解析、耐震診断・改修資料の整理分析などを行った。当初予定の学校や集合住宅に加え、多数の事務所建物に関する常時微動観測を実施し、うちいくつかの建物では強震観測も実施している。(2)モニタリングシステムのプロトタイプ開発とテスト中低層建物の平常時の振動特性と地震時挙動をモニタリングするためのシステムの仕様を検討した。機材の種別、設置条件、電源や回線状況、建物関係者の協力体制などに応じた多様な地震応答モニタリング例を試み、それらの実現可能性を検討した。一般的なインターネット回線等を通じて観測記録をメール添付でサーバーに送付する方法が、設置場所の多様なネットワーク環境に対応して有効であることを確認した。(3)モニタリング対象建物の選定と広域被災状況シミュレーション地盤特性や予測される地震動の分布と観測対象建物の耐震性の関係を考慮して、地域の被害の全体像を的確に把握するためのモニタリング対象建物の選定手法を検討した。まず名古屋市周辺について、ウェブGIS上に地盤や地震動の分布、観測建物とその属性、観測結果などを統合するシステムを構築した。これにより、ある地点での推定震度と実際の観測記録、特定建物の耐震性と被災状況との関係を確認すれば、広域の被害状況が概略推定できる可能性がある。基本データベース構築まで到達しており、今後はシミュレーションによる検討を進める予定である。
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日本地震工学会論文集 第9巻第2号
ページ: 51-60
Journal of Seismology Vol. 12, No. 2
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日本建築学会技術報告集 第28号
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