この研究の目的は、歴史的建築物のデジタルアーカイブに関してスケール模型を実際に作成することでアーカイブとしての精緻さを高める手法を確立することである。 題材となる伝統的木造建築物として法華経寺五重塔(千葉県市川市)を採用し、架構部材ひとつひとつについて3次元CADでのモデリングを実施した。3次元CADでは干渉チェックや視認によるデータチェックを行い、次に、NC工作機を用いて各部品を削りだす。削り出された各部品を模型として組み上げ、3次元CADだけでは追い詰められなかったディテールや組み立て手順に関して確認する。模型といえども、実物に忠実な縮小模型であるので、この手続きによりアーカイブデータの精緻さを確認することが出来る。模型でのチェックにより不都合が発見されれば、データの修正に立ち戻って同じ手続きを繰り返す。 五重塔は部品の種類および量ともにきわめて多く、スケール模型といえども実物と同等であるから、膨大なデータの管理が必要となる。これに対処するため、市販の3次元CADをカスタマイズしリレーショナルデータベースとシームレスに結合した。この結果、データベースの問い合わせ言語を工夫することにより、デジタルアーカイブの多様な見せ方、使い方が可能となった。 平成20年度内に目標であった初重〜五重すべてのアーカイブ化が完了した。模型作成によるデータ整合性検証も、繰り返し部分を省いた初重部の半分と五重部に関して実施し、アーカイブの正しさを確認した。
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