研究概要 |
急激に進む少子高齢化と,人口減少の影響を最も受ける過疎地を対象にし,自治体病院機能再編成を視野に入れた保健・医療・福祉の連携の可能性を,建築計画学における地域施設計画あるいは規模計画といった人口過疎地での理論構築を目的とし,これらの敷衍的実行可能性について検討する事が目的である。 今年度は,北海道日高保健医療福祉圏において,1)行政ヒアリング(保健・医療・福祉担当部署),2)各サービス主体の概要,3)施設・サービス利用者の地域分布,4)入所者/居者の住宅からの転居状況,入所/居者の属性-年齢・居住期間等,需要動向,保健・医療・福祉サービスの利用状況,5)中心施設利用者の地域分布,サービス提供の状況(職員の勤務状況・配置,地理的環境への対応,利用者の地域的特殊性・居住環境,など),経営状況などを収録した。 調査の結果から,生活圏域は概ね自治体内部で完結しているが,医療施設利用については,病院の場合には広域に展開していること,クリニックの場合には生活圏域内利用が殆どであること(福祉サービスや保健サービスの利用も同様),などの傾向が明らかになった。従って,入院施設の整った病院を整備することは得策ではなく,むしろ保健機能を備えた(健診サービスなど)クリニックの充実を図り,保健・医療機能を複合化した体系的整備の方が,利用者の生活行動に適していると考えられる。過疎地域での地域施設計画の要はクリニックである,と言えそうである。
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