(1)長久手町を対象とした都市部と森林部の水みち把握についての考察:都市部は、道路を水みちに見立て、数値地図2500を活用し、GISにより標高データから道路ごとの流向性質を体系的に把握する方法を試みた。2500数値データは精度が荒く、GIS上の解析では道路網全体の水みちネットワークを計算させることができず、クリギングなどの手法に加え、抽出結果をルール化し、目視作業を加えてネットワークベクトル分析図を作成する方法を提案し、その結果のデータから、水みち特性の6タイプの特性を抽出した。また、里山景観においては、水と緑のつながりをとらえることが重要であると認識し、水みちを指標とした森林から田園にいたる水と緑の連続性評価を試みた。 (2)グリーンインフラストラクチュアの概念を用いた浸透性街路空間デザイン:都市の街路を水みちネットワークとして外観する方法(1)は、精度が甘く、また、雨量との関係が数値化できなかったため、さらに詳細な数値地図が入手可能な名古屋市に対象を移し、年間降雨量を用いて降雨が街区から道路を経て集積する状況を詳細に検討できる方法を構築した。また、そこに、どのような配置で浸透性を高めたグリーンインフラストラクチャーを設置すると有効であるかについて複数の配置パターンを比較考察した。その結果を用い、グリーンインフラストラクチャーを設置すると効果的な道路を推定した。 (3)水系域における土地利用変化と河川流出:道路を用いた水みちの概念は街区レベルの考察では有効であるが、より大きなエリアを扱う場合には、土地利用と降雨との関係を把握する必要性があると考え、天白川、庄内川を事例に、集中豪雨時の降雨が流出が土地利用変化によってどのように異なるかを水門解析によって考察した。この結果、不浸透性被覆の多い都市部における土地利用変化の感度が高いことが把握され、都市部における流出抑制が内水氾濫等の抑制に有効であることが示され、都市部におけるグリーンインフラストラクチャーの導入の意味を再確認した。 (4)さらに大きなスケールとして、伊勢湾流域圏における水収支を年間降水量を基に考察し、都市的被覆の水収支に与える影響の大きさ、水田の流出抑制機能などを把握すると共に、人工的導水による水収支の変化についても概括した。また、リモートセンシング技術を用い、伊勢湾流域圏全体の土地利用を約15mメッシュで抽出し、それに基づいて、水系ごとの土地利用状況とその相違を概観した。
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