研究概要 |
今年度は,事務所建物の修繕・改修における所有者の意思決定を,実績データをもとに分析し,所有者の意思決定のモデル化を行った。具体的には,事務所建物の修繕・改修の実績を分析し,得られた知見をもとに,所有者の分類要因および根拠を,決定木を用いた分析によって明らかにし,所有者の戦略や経済状況によって,修繕・改修の意思決定が類型化できることを示した。さらに,所有者の分類に基づいた修繕・改修の意思決定のモデルを作成する。建物の所有者は,個々の戦略やくせ,経済的制約,建物の条件,その他固有の条件を多数保有している。さらに,外的要因やその時の状況等は建物によって異なり,全く同じ条件で同じ意思決定を行うということはあり得ない。そのような非常に複雑な条件の下で,所有者は状況に応じた意思決定を行い,その成果物として一連の修繕実績が出来上がっていく。このことを前提としつつも,所有者の修繕投資行動の大きな特徴には普遍的な部分が存在するという仮説をもって分析を進めた。建物の修繕は,そのような非常に複雑な要素が絡み合っている状況下で行われるため,すべてを一元的に扱ったモデルを作成しようとしても,モデルが煩雑になるばかりである。そこで,所有者が様々な状況に応じて行っている意思決定の過程にのみ着目し,所有者の意思決定を模したできるだけ簡潔なモデルを作成し,所有者の戦略や経済状況等の特徴が表れる修繕行動を把握しようとするものである。
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