研究課題/領域番号 |
19656154
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科, 教授 (90195967)
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研究分担者 |
山之内 誠 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (40330493)
宮代 隆司 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究所, 特別研究員 (80512540)
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キーワード | 瀬戸内 / シーボルト / 沿海域景観 / 地域活性 / 海からの眼差し / 風景記録の追体験 |
研究概要 |
本研究は、「環境デザイン」研究の視点から「沿海景観」と「土地利用」について現地調査・文献調査を行い、シーボルトがみた瀬戸内沿海域の景観が持つ固有価値を再評価することを目的とした研究である。 研究内容は、1.沿海景観・土地利用の現状把握と固有価値を持つ地域の現地調査、2.シーボルトが評価した沿海景観・土地利用の把握の為の文献調査、3.1.〜2.の比較・考察から沿海景観・土地利用の歴史的変遷の把握、4.現代における瀬戸内沿海景観の固有価値の再評価、を行った。 その研究成果として、 a.自然地形や社寺等、海側からの景観の核となる要素が、シーボルトの体験記録と変わらず生き続けている一方、それらが、陸側からの視点で開発された構造物で隠れ、遠距離から捉えにくくなっている。また、車両通過や利便性を優先した、本州と四国または島と島を結ぶ橋の建設は、瀬戸内景観の固有価値を形成しているとはいいがたい。 b.人々の日常生活は海域から隔離されて個々の住宅の中で完結し、屋外に表出する豊かな生活空間と行為が減少した。 c.構造物の大規模化により、かつて遠距離から近距離までの景観の連続性が曖昧化し、景観の奥行が消失したこと、を明らかにした。 本研究は、これまでの陸側からの視点による開発に対して、瀬戸内沿海景観を海からの眼差しで把握し、評価したことを特徴とする。そして、その契機となったシーボルトたち外国人の目からみた客観的な景観と風景の評価や、賞賛を得られたかっての瀬戸内沿海域の有機的な生活環境は、海との密接な関係によって培われていたことを明らかとした。これは、各地域・各環境に即した整備・開発の重要性を示すものであり、その有効性を、現地調査と過去の記録の追体験による確認や、現地の人々との価値の共有を通して、地域社会の未来のあり方と今後の瀬戸内海のあり方を提示できたことは本研究の成果だと考える。
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