本年度は国内での事跡、文献を中心に、モダニズム期において日本と関わりのあったオランダの建築家の作品や資料の調査を行い、またオランダの建築家と関わりのあった日本の建築家の足跡についての作品や資料の調査を行った。 日本との交流のあったオランダの建築家については、「日本インターナショナル建築会」の外国会員で、デ・ステイルのメンバーであった、G.Th.リートフェルト、J.J.P.アウト、J.ウィウスのほか、M.デュドック、M.クラークなどについて、昨年度、現地で入手した文献や書簡の翻訳作業を進め、事跡、評価についての考察・分析を行った。作品については、彼らの作品が戦前、戦後の日本の雑誌文献等でどのように紹介され、評価を受けたか、当時の写真や図面を調査・検討し、その造形的特徴についての考察を行った。 オランダの建築家と関わりのあった日本の建築家の足跡については、「日本インターナショナル建築会」の日本人会員の本野精吾や上野伊三郎に加え、村野藤吾、今井兼次などオランダに外遊した建築家、あるいはオランダの建築に関心を寄せたことが知られる建築家について、事跡、文献調査の上、考察を行った。作品については現地調査を行い、その造形的特徴についての考察を行った。図面や文献については、京都国立近代美術館や京都工芸繊維大学美術工芸資料館をはじめ、国内各地の美術館、博物館、図書館また古書店などで調査を行い、資料を充実させた。 いくつかの日本のモダニズム建築作品の形態や素材の使用方法などに、オランダの影響が認められたほか、オランダの建築家との直接的な交流を示す書簡などが発見され、その交流の具体的な様子が明らかになった。
|