研究概要 |
年度初からしばらく昨年度調査の成果にもとづく世界自然遺産ハロン湾水上集落の景観シミュレーション作業の仕上げにあたるアニメーション制作に集中した。筏住居が大多数を占める現状の景観をB期とし、筏住居が皆無で家船だけだった10年ほど前の景観をA期、ベトナム側の施設計画に基づく近未来をC期とし、各時代の景観をアニメーションCGで表現した。いうまでもなく、B期については調査の成果、A期は「復元」、C期は「シミュレーション」である。このうちC期については、世界自然遺産ハロン湾の景観とスケール感・デザインの両面で調和しているとは言い難く、むしろB期の筏住居を積極的に評価して、これを継承するようなデザインを近未来も採用し、機能・構造の強化を図るべき考え始めている。。 8月には、昨年の調査地クアヴァン漁村で補足調査をおこなった。わずか1年しか経っていないのに村の人口は微増し、カラオケ店や浄化水販売点が設置されていた。カラオケ店については、村の若者は歓迎しているものの、年長者は「夜、うるさい」ので煩わしく思っている。世界的にみれば、水上居民の「陸上がり」から水上集落は減少の一途を辿っているが、ハロン湾では人口微増にして「都市化」の傾向を読み取れる。ハロン湾での補足調査後、カンボジアのトンレサップ湖のチョンクニアス村でも水上集落の調査をおこなった。数年前と比べ、あきらかに家船は減っており、筏住居やそれが陸上がりした小型の高床住居が岸辺に多数建設されていた。 10月には北京で開催された日中韓共催の国際シンポジウムで、ハロン湾調査に関わる発表をした(Trasformation of Cultural Seascape on Ha Long Bay, Vietnam)。年度末には個人研究費と科研費残金をあわせて、ネパールのヒマラヤ山麓で広大な段畑の文化的景観とバクダプル、カトマンドゥ、パタンの世界遺産を視察した。
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