研究概要 |
第一原理熱力学計算により水素修飾された酸化チタン多形間の相対的安定性を議論することを目的として,第一原理に基づいてフォノン振動数の計算および熱力学関数の計算を行った.また,理論的検討と並行して,合成方法や水素含有量の異なる酸化チタン試料や比較のための標準試料を用いて系統的な熱処理実験を行い,結晶相の変化,熱重量,脱離水素の分析を行った.また,ルチルとアナターゼの光触媒機能の差の起源と考えられる伝導帯の電子構造について,水素修飾の影響という新しい観点から理論的に検討した. 具体的には,様々な水素修飾酸化チタン多形や関連化合物について第一原理計算に基づいたフォノン計算により比熱の温度依存性を求め,それを積分することにより自由エネルギーを算出した.有限温度下での水素の配置・分布を精確に求めるため,振動のエネルギー・エントロピーを含めて考察した.また,水素修飾の光触媒機能への影響を調べるため,バンドギャップ近傍の一電子軌道のエネルギーや化学結合状態の変化を詳細に調べた.検証実験としては,合成方法や水素含有量の異なる酸化チタン試料や比較のための標準試料について,熱処理に伴う結晶相の変化,熱重量と脱離水素量を分析した.含水素量と,アナターゼールチル転移温度の関係,転移点と熱重量変化,脱離水素量との関係などを調べた.これらの結果,酸化チタン及び関連化合物の安定性やその中での水素の配置及び化学結合状態が定量化された.
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