研究概要 |
本研究においては強磁性体であるFeの柱状組織薄膜を作製し,形状磁気異方性を利用した垂直磁化膜を作製することを目的とした.その際に,隣接するFeの柱状組織を分離する非磁性相としてCrを用いた.そしてFeとCrの同時スパッタリングにより柱状組織を持つ薄膜を作製し,その後熱処理を行うことでFeとCrの相分離を試みた. 申請者のこれまでの研究から,Snを数ナノメートルあらかじめ堆積させ熱処理を施すと,Snのナノドットが形成されることが分かっている.そこで,まず,Snナノ粒子の下地層を作製し,熱処理前のFeCr層への効果について調べた結果,Snの堆積量を変化させることでSnナノ粒子のサイズをコントロールすることに成功した.また,Sn下地層を用い,その上に堆積させたFeCr層の面内方向の径はSnナノ粒子の径とほぼ一致した.また,FeとCrを相分離させるために350℃〜500℃で1hの等温保持を行った.その結果,450℃以上でFeとCrの相分離は完全になされた.また,Sn下地層を用いなかった試料は350℃の熱処理で柱状組織が崩壊した一方で,Sn下地層を用いた試料については熱処理によって相分離した後も,隣接する粒との結合等が見られるものの柱状形状を保っていた.熱処理による相分離後においての柱状形状の完全な維持を目指し,10Tの強磁場中での熱処理を行った.しかしその結果としては,熱処理後の表面および断面形状に無磁場における熱処理後の試料との目立った相違は見られなかった.なお,柱状組織を有するナノロッド磁性膜は作製法のいかんを問わず,垂直磁気異方性を示すことが明らかとなった.
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