最終年度である平成21年度の目標を、「ガラス等をベースとするマルチ機能材料の創製と革新機能性の評価」として実施し、次に示す成果を得ることが出来た。 (1)特異な配向構造と発光特性を有する酸化亜鉛を含有するナノ結晶化ガラスの開発:多様な電子・光機能性を示す酸化亜鉛(ZnO)について、ガラス中にナノ結晶として析出させることで、ガラス-結晶の界面準位や非平衡酸素欠陥などの可変的な導入が期待される。これは、例えばナローギャップ化による発光特性の拡幅など、さらなる高機能性化の実現につながる。この目的の元に、ある種のガラス系を前駆体とし、結晶化処理条件を最適化することによってZnOが単相で析出し、かつ50%以上の体積分率を有する従来にはない半導体含有結晶化ガラスを得ることに成功した。この結晶化ガラスは、熱処理条件や局所的なレーザー加熱、さらには外部印加電場による結晶化処理に依存して高い結晶配向性を示し、また単結晶等に比べて長波長領域にブロードな発光特性を示す。これらは局所的な外場制御により発現した特異な形態や光物性であることが示唆され、新規なガラスベースのマルチ機能材料につながる基盤的な成果が得られたといえる。 (2)酸化亜鉛薄膜の極性制御による1D/2D分極反転構造の形成と第二高調波発生:従来例に比して波長領域が格段に広い非線形光学素子への応用を目指して、分極反転構造を有するZnO薄膜を用いて、非線形光学特性の評価を実施した。1次元および2次元分極反転構造に特有の入射光角度成分に対して位相整合により振幅増幅された高調波発生を確認した。特に2次元分極反転構造は、これまで報告されている誘電体結晶の場合と比較して、およそ一桁以上の微細化が可能となり、より高機能・多機能な素子展開が期待される。
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