宇宙往還機などに搭載する温度環境の過酷な条件下での超精密機器などへの応用展開が期待されるマンガン窒化物負膨張・ゼロ膨張材料に破壊・破断の自己診断機能(応力感応機能)、雰囲気感応性などの機能を付与したインテリジェントな構造材料の開発を目指している。遍歴強磁性体であるマンガン窒化物に元素(Ge)添加によりゼロ膨張性を付与させ、その場合の磁性と機械特性の関連づけを行った。窒素欠陥を導入した遍歴磁性体Mn3CuNの機械的性質は金属的で展性に富むが熱膨張制御のためのGeの大量(50%)添加は母物質に負膨張性を付与させ、その際他の磁性負膨張合金と異なりヤング率と硬度が大幅に増加することが明らかとなった。その際、反強磁性磁気秩序と機械特性の高靱性化は当初予測されたような直接関連性は無いことが明らかとなった。磁性との関連はないもののMn3CuNは窒素欠陥とGeの大量ドープによりゼロ膨張、高靱性セラミック材料となりうることが分かった。 一方、バンド構造制御によりかろうじて強磁性秩序が保たれている状態の窒化物遍歴強磁性体に応力・歪みや腐蝕性ガスなど化学的刺激を加えることでバンド構造に修飾を加えた場合、磁気転移や表面で金属絶縁体転移を誘発しその磁性・伝導性が激変するのではないかと考えセンサーとして応用展開も考えている。現在は腐蝕性ガスセンサーへの応用を考え、ヘテロ接合による雰囲気感応性素子構造の最適化を酸化物モデル素子で検討している。応力感応性材料への展開は20年度の課題であり歪みと電気抵抗の関連は現在検討中である。
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