研究概要 |
水酸アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2)は、骨や歯の無機成分であることが知られており、体内で骨と直接結合する性質を示す。このことから医療の分野では、人工骨や人工歯根として広く用いられており、水酸アパタイトは、生体分子や生体組織に対して特異な親和性を示すセラミックスといえる。従来の水酸アパタイトは、湿式法で合成したマイクロメートルサイズの凝集粒子から焼成を経て得られている。水酸アパタイトのナノ粒子が高い分散状態で得られれば、高い比表面積を活かして、タンパク質や抗体、DNAに吸着特性に優れた機能が発現すると期待できる。さらにナノ粒子であれば生体組織への導入も容易となり、ドラッグデリバリーシステム(DDS)や遺伝子導入用ベクターとしての応用展開も広がる。しかし、従来の研究では水酸アパタイトや関連するリン酸カルシウム系化合物のナノ粒子を安定に高精度で合成した報告はない。 そこで本研究では、ヒトの細胞外液の無機イオンと同じ組成を持つ溶液(擬似体液)を基礎組成にしたバイオミメティックプロセスを拡張させて水酸アパタイトや関連したリン酸カルシウム系化合物のナノ粒子の合成を行い,その組成や結晶構造,形態をナノメートルレベルから制御を試みる。 平成19年度は、エタノールやアセトンなどの有機溶媒を擬似体液に添加して、用いて、擬似体液からの水酸アパタイトがアパタイトの析出する条件を調べた。擬似体液に対して、有機溶媒を20vol%以上添加した場合にすると、溶液の白濁が観察された。この白濁を回収したところ、塩化ナトリウムを含有する水酸アパタイトであることが同定された。塩化ナトリウムについては、蒸留水で十分洗浄する方法で、除去することに成功した。得られた水酸アパタイトを透過電子顕微鏡で観察したところ分散性の高いナノサイズの粒子であることが確認できた。
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