研究概要 |
1)SiO_2-TiO_2系紫外光応答性カプセルの作製 高分子電解質多層膜からなるカプセルに反応条件などを調整することにより,表面にSiO_2-TiO_2を均一にコートできた。紫外光照射前に球形を保っていた粒子は照射後には膜に開裂が見られ,その後,照射時間を長くすることで開裂の度合いが大きくなることがわかった。TiO_2の光触媒効果によって粒子殻を形成する高分子電解質層が分解し,カプセルが開裂したものと考えられる。さらに粒子の開裂と共に,内包された色素が放出されることを確認した。TiO_2含有量を増加させることによってその放出速度は増加した。一方,紫外光の照度を変化させた場合,照度が低いときは,吸光度の増加速度は緩やかであるのに対し,照度を高くすることによって放出速度は増大した。これらのことより,膜組成や照度などでTiO_2の光触媒特性をコントロールすることで,カプセルの内包物放出挙動を自在に制御できることが明らかになった。 2)SiO_2-H_3PW_<12>O_<40>(WPA)系中空粒子の作製 高分子電解質とSiO_2およびWPAの多層膜からなる中空粒子のSEM,STEM観察の結果,WPAを積層した粒子は,積層前と比較して凹凸が増大していることと,高真空下でも中空構造を保つことが明らかとなった。また,EDX分析より,WPA積層数の増加に伴いW/Si比が上昇した。これらのことから,SiO_2層で構造を安定化した中空粒子の表面にWPAが高分子電解質を介して段階的に積層されていることが明らかとなった。さらに,粒子を90℃の温水に1時間浸漬させた後でも,W/Si比の減少は見られず,WPAが水にほとんど溶解しないことを確認した。WPAは水に極めて溶けやすく潮解性を示すが,PDDAを用いて交互積層することで,中空粒子表面に固定化できることが明らかとなった。
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