本研究では、腐食防止膜にプロトン伝導体を適用することにより、膜中の腐食ガスの内方向拡散を抑制し、腐食防止膜の特性向上を図ることを目的としている。前年度の研究では、プロトン伝導体の一つであるLa_2Si_2O_7について、O_2+H_2Oのポテンシャル勾配下では、O_2のみのポテンシャル勾配下に比べて、酸素透過量が減少するとともに、水素透過が起こっていることを明らかにしている。今年度は、水素の透過も同時に抑制するため、プロトンの透過がほとんど無いAl_2O_3との積層化を検討した。ホットプレスによる固相接合を実施し、1300℃で接合体が作製可能であった。一方で、実際にガス透過性を測定する1500℃以上では液相が生じており、ガス透過性の測定は困難であった。なお、熱力学平衡計算によれば、上記組合せは、1500℃においても広い酸素分圧範囲で反応しないことが示され、今回の実験結果とは異なる予測結果が得られている。ここで、今回供試したLa_2Si_2O_7粉末は、ICPによる分析の結果、僅かにSiリッチ側にずれた組成であった。La_2O_3SiO_2系の相図によれば、La_2Si_2O_7の組成からSiリッチ側にずれると、液相が共存する温度が大きく低下する傾向にあることから、La_2Si_2O_7の組成のずれが液相生成に関与した可能性が高い。更に、Al_2O_3が加わって多成分系となることで、液相の生成がより低温で促進されているものと推察される。したがって、La_2Si_2O_7-Al_2O_3積層体を超高温の腐食防止膜として安定に用いるには、La_2Si_2O_7の組成の厳密なコントロールが重要になるものと考えられる。
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