交流磁場中で発熱する針状材料は新しい癌治療の医療器具として、発熱特性・生体適合性・異方性などの特性が優れた材料が期待されている。本研究はその開発に関するものである。 交流磁場中で発熱する針状材料の設計指針を明らかにするため、金属針と磁性材料の入った金属針の2種類について、汎用電磁場解析ソフトJMAG-studio Ver.9.0によるコンピューターシミュレーションで解析を行なった。その結果、チタン管にMgFe_<2>O_4フェライト磁性粉末を入れた試料について、フェライトが磁場を集束し、金属部のチタン管に渦電流が流れ、電気抵抗の損失による発熱が著しく増大することを確認した。さらに金属の電気抵抗の因子により発熱が影響されており、その発熱の極大となる付近にチタンの電気抵抗が位置するため他の金属よりも優れている。また、急冷されたMgFe_<2>O_4をチタン管に入れることにより発熱特性が向上した。 一方、治療に用いる場合、磁場方向と発熱の異方性の検討はきわめて重要である。すなわち、一般的に磁力線と並行に針が位置する場合は発熱が大きく、垂直に位置する場合は発熱が小さくなる。この形状異方性は実際の治療には大きな支障があるため、発熱部である磁性体材料を凸状に加工し、そのまわりを生体適合性の良い材料で被覆する構造とした。凸部は十分な体積を有するため、非常に大きい発熱効率を得ることができる。また、凸部は針が深く入りすぎることを防ぐ役割や凸部の肩の部分に生体表層が接するため表面の焼妁に効果がある。この改良の結果、この針状材料は、角度による発熱特性の異方性が極めて小さくなった。
|