研究概要 |
本研究では、多成分系ペロブスカイト型酸化物ナノ粒子を室温で直接合成するための紫外レーザー光分解法を開発することを目的としている。本年度はまずペロブスカイト型酸化物の構成元素となりうる各種の金属硝酸塩溶液に対して紫外レーザー照射を試み、沈殿物の生成の有無と相の同定を検討した。対象とした金属硝酸塩はLa,Ce,Fe,Co,Ti,Mgである。これらの硝酸塩が0.08Mの濃度となるようにエタノールやイソプロパノール溶媒に溶解されたものを被照射溶液とした。この溶液に、KrFエキシマレーザー(波長248nm,650mJ/shot)を50Hzで30分から1時間照射した。この結果、Ce,Fe,Mgでは沈殿物の生成が確認された。X線回折と顕微ラマン分光から、Ce硝酸塩からの沈殿物は粒径数nmメートルの蛍石型構造を有する粒子であることが確認された。Feに関しては水酸化物と酸化物の混相と推定された。La,Coについては粒子の晶出は確認されず、Tiに関しては照射後に溶液の変色が観察されたものの粒子の晶出は確認されなかった。そこで、酸化物として得られたセリアナノ粒子について粒径や凝集状態を、均一沈殿法により得られるセリアナノ粒子と比較検討した。粒径は熱処理温度(100〜700℃)により制御されたが、熱処理温度の増加に伴いXRD解析に基づく一次粒径は作製方法によらず単調に増加した。これに対してBET解析による二次粒径は、均一沈殿法では同様に単調に増加したが、紫外レーザー照射では約25nmとほとんど変化しなかった。これは均一沈殿法ではナノ粒子間に細孔が含まれる凝集体となるのに対し、紫外レーザー照射ではそれらが存在しない多結晶体を形成するためと推測された。
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