研究概要 |
直接メタノール形燃料電池(DMFC)の電極触媒として、Ptが用いられるが、メタノールと酸素が共存すると、酸化反応と還元反応が同時に生じ、DMFCの起電力と出力の低下を引き起こす。本研究では反応選択性のある電極の作製を意図して、Pt-C二元系スパッタ電極を作製し、メタノール酸化と酸素還元活性を各々測定した。 Au基板上に同時スパッタ法を用いて,Pt-C層を形成した。作製したPt-C電極は、エネルギー分散X線分光法(SEM-EDS)、X線光電子分光法(XPS)、X線回折(XRD)で評価した。また、電気化学測定は,硫酸水溶液中,N_2およびO_2雰囲気下で電位走査法により電流-電位(i-E)曲線の測定を行った。 作製したPt-C電極をEDSで組成分析した結果、Pt:C=100:0〜56:44(原子比)であった。XPSスペクトルが、Cの添加によりPt 4fの結合エネルギーが高い側にシフトしたことから、Pt-C間に電子的相互作用があると考えられた。XRDより,Cの添加がPt粒径を減少させることも分かった。 i-E曲線測定の結果,Ptスパッタ電極(Pt:C=100:0)では、メタノールとO_2が共存すると、メタノール酸化と酸素還元の活性がいずれも低下した。これはPt上でメタノール酸化と酸素還元が同時に生ずるためと考えられる。 一方、Pt:C=56:44電極では,メタノールとO_2が共存すると酸素還元活性は低下するが,メタノール酸化活性は向上した。すなわち,Pt-C電極におけるO_2存在下のメタノール酸化は、一種の増感反応と捉えられる。また、Pt-C電極における酸素還元活性は、Pt電極と比べて低下した。これは,Pt-C電極におけるPt粒子サイズの減少と関係していると思われる。 以上より,本研究で見出された電極を燃料極に使用することで、高出力の直接メタノール形燃料電池を作製できると期待される。
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