研究概要 |
析出誘起再結晶を利用したガスーデガスプロセスによる表層の集合組織制御を目的として,平成19年度は種々のフェライト系およびオーステナイト系鉄合金における再結晶発現条件を調べた.フェライト系合金としてFe-(1,3,10,18,30)Cr合金を,オーステナイト系合金としてFe-20Cr-10Ni,Fe-(3,10,20)Cr-35Ni合金を用い,それぞれの合金に対し693〜973Kの温度で種々の時間プラズマ窒化処理を施し,その組織を電顕および電子線後方散乱回折(EBSD)により調べた.フェライト系合金では,高温,低Cr組成の条件ではフェライト母相中に板状のCrNが連続析出するのに対して,低温,高Cr組成の条件ほどフェライト+CrNのラメラからなる新たなフェライト粒が未窒化領域とΣ9の対応格子関係を持って柱状に成長することが明らかとなった.一方,オーステナイト系合金ではFe-20Cr-10Ni合金を943Kで,Fe-(10,20)Cr-35Ni合金を843K以上の高温で窒化すると窒化領域にラメラ状CrNを含む新たなγ粒が生成すること,添加Cr量の少ないFe-3Cr-35Ni合金ではいずれの窒化温度でも新たなオーステナイト粒は生成しないことを見出した.これら新たに生成したオーステナイト粒はフェライト系合金と異なり元のオーステナイト粒と<100>γを共有し10〜40°の方位差を持つことが明らかとなった.また,オーステナイト系合金の一部窒化条件では,窒化中にオーステナイトに比べ窒素拡散係数が大きいフェライト粒が生成するため,窒化層の成長が著しく促進される異常成長が現れるという重要な知見が得られた.
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