研究概要 |
本年度は、析出誘起再結晶が発現するフェライト系ステンレス合金(Fe-18%Cr)およびオーステナイト系ステンレス合金(Fe-20%Cr-10%Ni)を823Kで18ksプラズマ窒化した後, 種々の温度まで再加熱して水素焼鈍を施し, その組織変化を調べた. 窒化したFe-18Cr合金およびFe-20Cr-10Ni合金を823K〜1023Kで水素焼鈍した後EBSD測定により, 再結晶集合組織を調べた結果, 両合金ともに窒化時の析出誘起再結晶組織が, 水素焼鈍後にも変化せず存在することが明らかとなった. Fe-18Cr合金を823Kで36ks水素焼鈍しても, 窒化物組織に顕著な変化は見られない. 923Kで36ksの水素焼鈍を施した場合には, 窒化層内のCrNラメラが一部球状化し始め, 未窒化層内でも窒化物が生成することが明らかとなった. しかしながら, 水素焼鈍温度を1023Kまで上げて, 144ks保持しても窒化層内の窒化物の球状化は促進するものの脱窒は進まない. Fe-20Cr-10Ni合金の水素焼鈍でも, 窒化物の球状化が観察されたが脱窒反応は完了せずCr窒化物が表面近傍に残存することが明らかとなった. 以上より, フェライト系およびオーステナイト系ステンレス鋼の窒化で発現する析出誘起再結晶の集合組織は水素焼鈍後も残存するが, 1023Kで長時間の水素焼鈍処理を行っても脱窒反応が完了しない. より高温での水素焼鈍処理を施すことで, Cr窒化物が固溶して母相Cr濃度の増加が予想されることから, 集合組織制御した高耐食性合金を作成できる可能性が示唆された.
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