本研究は、有機薄膜の新しい成膜技術を開発して、多様な有機材料の薄膜化・積層により新しい機能を創出し、それを活かした新しいデバイスへの応用を目指すものである。本年度に得られた成果を以下に示す。 1.基本技術としてミスト法を用いることとし、超音波による各種有機材料の霧化条件について調べた。この結果必要な超音波出力、超音波周波数について明らかにした。周波数は2.4MHzとこれまで酸化物薄膜のCVDに用いた条件と同じであるが、超音波出力についてはこれまでより約3倍必要なことが明らかになった。これはこれまでの水溶液を霧化していたのと異なり、目的の有機材料を含む溶液の粘度が高いことによるものと推察される。 2.上記超音波出力を得るためには新しい方式での超音波振動子が必要である。そのため複数の超音波振動子を順に駆動してヘリカル的な超音波伝搬を得るという新しい方式を開発し、そのための超音波振動子、駆動回路を作製して霧化器を完成させた。 3.有機薄膜を窒素雰囲気中で成膜するための装置を設計し、作製した。 4.数種類の有機薄膜について成膜を試み、基板温度を室温の状態で薄膜を得ることができた。以上、本年度の研究によってミスト法によって有機薄膜の成膜が可能なことが明らかになった。来年度は本技術の特質を生かした有機薄膜の機能創成とデバイス応用に研究を展開してゆく。
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