本研究は、有機薄膜の成膜にミスト法を適用し、成膜の低コスト化を図ることで有機デバイスの広い応用を目指すものである。本年度に得られた成果を以下に示す。 1. 有機薄膜の例として導電性薄膜として知られているPEDOT-PSSをとりあげ、ミスト法による成膜を試みた。水を溶媒として用い、超音波の周波数を2.4MHzとすることで成膜が可能なことを実証した。成膜時間による膜厚の制御が可能で、およそ10nm/minでの成膜速度となった。PEDOT-PSSの導電率はスピンコートで得られたものとほぼ同等である。また成膜時にメタルマスクを用いて、リソグラフィーを用いることなくパターニングが可能なことを示した。これはデバイスプロセスの簡素化という点で重要な成果である。 2. PEDOT-PSSとZnMgOおよびInGaO薄膜の積層により良好なショットキ接触を得ることができた。これを用いる紫外検出器を作製して、10%程度の量子効率を持つ紫外検出器の作製に成功した。 3. ミスト法による水溶性有機蛍光物質の成膜を試み、発光を得ることができた。このことからも、ミスト法の有用性が確認できた。 4. アルコール等の有機溶媒を用いて高分子系有機薄膜の成膜を試みた。溶媒の種類や水との混合比により霧化に適切な条件があることがわかり、限定された条件でのみ霧化・成膜が可能であった。 以上、ミスト法によって有機薄膜の成膜が可能なことが明らかになり、成膜プロセスの低コスト化に寄与する成果が得られた。
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