研究概要 |
自動車触媒の基幹素材である白金族金属の高効率リサイクルプロセスを確立することは,資源セキュリティーや地球環境の保全を考えると緊急の課題であるが,化学的に極めて安定な白金族金属を酸に溶解する湿式法では強力な酸化剤を用いた長時間の処理が必要であり,処理困難な沈殿物や廃液が多量に発生し環境に悪影響を及ぼすという問題点が発生する。これらの問題点を解決するためには,「強力な酸化剤を含まず処理時間の短い白金族金属の新しい回収プロセス」を構築する必要がある。そこで,白金族金属をマグネシウム(Mg)などの活性金属(R)と合金化させる処理を施すことによって一旦R-Pt合金を生成し,さらに合金化処理を施した白金族金属を塩化物と反応させ酸に易溶性の白金塩化物を予め生成させることにより,強力な酸化剤を使用しなくても白金を酸に溶解させることができる新しい手法を確立することを目的とした研究を行った。 平成20年度の研究では,R-Pt合金にCuCl_2やFecl_3を塩化剤として673K〜873Kにおいて3時間塩化処理を施すと強力な酸化剤を含まない塩酸へのPtの溶解度が飛躍的に向上することを実証した。さらに,塩化剤であるCuCl_2とPtの固体粉末を物理的に接触させずにCuCl_2から気相として発生するCl_2がPtを塩化する気相反応よりも,CuCl_2とPtの固体粉末を物理的に接触させてCuCl_2が直接Ptを塩化する混合反応を用いて塩化処理を施す方が,Ptの酸への溶解度が向上することが分かった。この理由を熱力学的駆動力の観点から解明し,気相反応においてCl_2ガスがPtを塩化する場合よりも混合反応においてCuCl_2が直接Ptを塩化する場合の方が,塩素ポテンシャル(Pc_<12>)が高い状態で反応が進行するためであることが分かった。
|