研究概要 |
本研究では金属を表面酸化した後、還元処理を施した際に形成する表面微細孔を利用した新規材料ならびに材料プロセスの開発を行っている。表面微細孔材料の表面に溶融金属を接触させると材料表面に溶融金属が異常に濡れ広がる現象を見出し、我々はこの現象を特異拡張濡れと名付けた。本年度の研究ではこの濡れ現象の機構を明らかにするため、基材と溶融金属間の濡れ性を調査を行った。種々の温度において固体Fe上の溶融In,Biの接触角を測定した結果、Inについては何れの温度でも良好な濡れ性(〜20°)を示す一方、Biについては融点より700℃近傍までは接触角が90°以上、700℃以上では90°以下となり良好な濡れを示すことを明らかにした。そこで表面微細孔Fe基板への両金属の濡れ現象を調査したところ、Inは融点以上の何れの温度でも、 Biについては700℃以上で特異拡張濡れを示したため、この濡れ挙動が毛細管現象により生じることを明らかにした。次いで特異拡張濡れの電子材料のマイクロソルダリングへの適用の可能性を検討した。配線あるいは基板材料としてCuに着目し、Cu基板の酸化還元処理による表面微細孔の形成を調査し、最適処理条件を見出した。それに基づき作製した表面微細孔Cu基板ならびにCu細線の溶融Biによる接合を実施した。その結果、溶融BiのCu基材への特異濡れ現象により、肉盛の極めて小さい接合点が形成されたことから、酸化還元処理による被接合材料への表面微細孔の作製を用いた新規接合法の可能性を見出した。
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