研究概要 |
本年度は,薄膜作成のための最適条件を見いだすため,購入したハイスピードディジタルカメラにより霧化現象メカニズムについて観察を行った。 これまで,安定した霧化現象を起こすには,弾性表面波(SAW)デバイスへの印可電圧が30V_<p-p>以上かつSAW伝搬面に薄い液膜をもうける必要があると考えてきた。このため,湿らせた濾紙を用いてきた。ハイスピードカメラによる観察の結果,霧化が生じているのは濾紙からしみ出した部分であることを明らかにすることができた。そこで,1μ1以下の液滴をSAW伝搬面上にのせて観察を行った。印可電圧が33V_<p-p>の場合,SAW印可から5ms秒後に液滴飛翔現象が生じた。液量が少なくなった15ms秒後に,飛翔から霧化になることが分かった。霧化は数十μm以下の薄い液膜からのみ生じることが明らかになったので,予め薄い液膜をもうければ低電力霧化が可能と考え,電圧依存性を調べた。得られた結果より,4.1V_<p.p>という従来よりも低い電圧で霧化が発生していることが明らかになった。霧化発生効率は電圧低下により低くなる。しかし,低電圧であるほど液体の温度上昇は少ない。薄膜作成に用いる材料により最適な電圧を選べばいいことをこの結果は示唆している。さらに,霧化のメカニズムを調べるため,入出力電圧について調べた結果,従来,霧化のメカニズムとして考えてきたSAWストリーミング以外の力も寄与している可能性が強いことを明らかにした。
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