研究概要 |
本研究課題では,生体膜の潜在機能を保持した担体を用いた「バイオメンブレン(生体膜)・クロマトグラフィー」を提案することを目的とする.従来型クロマトグラフィー(アフィニティ,金属アフィニティ,固定化リポソームなど)と比較し,バイオメンブレン・クロマトグラフィーの有効性について検討し,バイオメンブレン・クロマトグラフィーを開発・応用するための方法論を確立する.そのため,以下の項目にしたがって検討を行う予定である. H19年度:機能性リポソームの調製/機能評価 H20年度:機能性リポソームの固定化ならびに安定性評価 H21年度:バイオメンブレン・クロマトグラフィーの基礎と応用 初年度では,機能性リポソームの調製/機能評価を中心に,以下の観点に基づいて検討を進め,知見を得た. (1)Break-down型アプローチによる超機能性リポソームの調製/機能評価:酵素(Superoxide dismutase,SOD)から得られるペプチド断片をリポソーム表層に提示し,SOD様活性の発現条件を検討した結果,溶液系では活性がほとんどみられなかったが,リポソーム上において提示した系では100%近くまで活性が回復する系を見出した. (2)リポソーム固定化の基礎研究:固定化リポソームの安定性を評価した結果,ゲル担体への3次元的固定化だけではなく,電極基板のような2次元界面上での固定化においても高い安定性を示すことが明らかになった. (3)ハイスループットセンシングシステムの開発:リポソームを電極基板上に固定化することで,電気化学センサや水晶振動子マイクロバランス法との併用が可能であることを検証し,リポソームをセンサ素子としたmembrane chipの基礎的知見を得ることができた. 以上の知見は,バイオメンブレン・クロマトグラフィーの設計指針が原理的に可能であることを立証したことにつながったと考えられる.
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