半導体としての性質を持つナノパーティクルをナノオーダーで自由に配置することが可能になれば、触媒をはじめ様々な高機能構造体などに応用できる可能性がある。本研究では、DNAの特異性を利用することにより2次元領域にナノオーダーで自由にナノパーティクルを配列させる手法を開発することを目的としている。 昨年度までの研究では、DNAのハイブリッド形成により網目状の鋳型構造を作成できること、RecAタンパク質による1本鎖DNAのもぐりこみ反応を用いてナノ粒子をDNA分子の特定部位に配列させられることを明らかにし、さらに、配列化において鋳型として働くDNA分子をガラス基板上に展開する技術(液滴移動法)の開発を行った。そこで、本年度は、その技術を応用してマイカ基板上にDNA分子を展開し、原子間力顕微鏡観察試料を作成する技術の開発を行った。 具体的には、まず、蛍光顕微鏡での伸張操作において使用したλDNAを液滴移動法によりマイカ基板上で伸張し、AFMにより観察した。λDNAは48.5kbpであり約16μmであるので、完全伸張した場合には、観察したλDNAの長さは4μm四方であるAFM観察の視野を超えるものと予想されたが、実際の観察でも多くのλDNAが斜め方向に視野外まで伸張されたことが観察された。しかし、あまり伸張されていないλDNAや観察を阻害するアミノシランの析出もみられたので、今後の改良が求められる。 また、λDNAより短いDNA(約3kbp)である1か所切断したpBluescript II SK+(pBsBH)の伸張を試みた。その結果、AFMの観察結果から測定されたDNA長は理論値である1μmとほぼ一致しており、このことはAFM観察におけるDNA伸張法として今後、幅広い範囲で応用可能であることを示していると考えている。
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