今年度は、まず、ビーム自身の形状変形・保持性を利用した形状制御、および、集中配置アクチュエーターによる変形・伸縮制御を利用した収納展開・形状制御機構を改良して、小型・軽量・省電力化の検討を行った。ビームの長大化を図るために、かなり低剛性なビーム材料を選定し、極座標型テーブル機構、ドラム収納、ワインディング機構の採用、機器配置の再構成などの各種工夫を施して、5mの収納展開を持ちながら、容積、重量、電力ともに小型化に成功した。そして、ビーム形状の幾何学的性質を用いた定曲率曲線生成法、可変曲率曲線生成法、それを拡張した逐次定曲率曲線生成法を提案した。MATLABを用いた統合的なシミュレータを開発して、基礎的な数値解析を実施し、ビーム形状の生成、先端の位置および姿勢の稼動範囲の特定、運動学の定式化などを行い、基本的な特徴を明確化した。そして、形状生成アルゴリズムの計算時間に難点があることなどの課題も明らかになった。ついで、試作した機構を用いた基礎的な実験を行った。3次元位置計測装置を用いて0.5mm程度の誤差範囲で形状位置の計測を実施した結果、ほぼ予想どおりにビーム形状制御ができることを示した。ビーム長さを1m以上伸ばした場合、重力下の実験のために、低剛性ビーム材料がそれ自身の自重で形状が変形する問題が生じる点などが明らかになった。そのため、2次元に制約した形状変形実験を行い、基本特性を取得した。今年度得られた成果により、新しい概念である形状保持機能を利用した可変形状ビーム装置(MBD)が基本的に実現可能であることが示された。
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