本研究では従来の多関節型ロボットアームとは異なるシステムとしてMorphable Beam Device (MBD)を提案し、柔軟性・形状保持性を持つチューブをビームとして用い、根元に集中したアクチュエータにより先端位置を制御することで、システムの小型化、単純化が容易で様々な用途への応用が考えられる。今年度は、ビーム変形に関する基礎的な特性を解析してモデル化を行い、先行研究にて製作されたMBD試作機を改良して解析モデルの検証実験、ビーム先端位置の方向指定制御と調整法について実験的な検討を行った。具体的には、ビーム変形機構におけるローラとビームとの間の隙間を考慮し、変形部入口においてビーム接線が鉛直上方を向くという仮定を設けて変形モデルを導出することにより、ビーム変形が意図した方向と逆転する転移現象が説明でき、ビーム曲率半径(制御出力)と変形機構の変位(制御入力)の関係を求めた。MBD試作機では、変形部上下段の高さの差とビームとローラの隙間をパラメータとして変更可能なように設計して、伸展されるビーム曲率半径と変形部変位の関係を計測し、提案したモデルと定性的には一致することを示した。さらに、先端接線方向指定制御実験を行い、変形部変位と先端接線方向角との関係を求め、指定できる先端接線方向角の上限値も求めた。微小な範囲内であれば、先端位置を各軸方向に制御可能で3次元的に任意の方向へ変位できること、ビーム変形部のガタおよび局所的なビーム形状による影響を確認した。以上により、MBDの変形メカニズムについて重要な知見が得られた。
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