研究課題/領域番号 |
19656236
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研究種目 |
萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 努 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10313636)
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研究分担者 |
福嶋 正巳 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40344113)
米田 哲朗 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00002056)
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キーワード | アミノ酸 / ペプチド / メラノイジン / 鉱物 / 粘土鉱物 / 触媒 / 分子進化工学 |
研究概要 |
スメクタイト(モンモリロナイト、ヘクトライト)、シリカ、γ-アルミナ、カオリナイト、ヘマタイト、ハイドロタルサイトを用い、繰り返し蒸発乾固法、および相対湿度下でのペプチド生成実験を行った。その結果、鉱物種によって著しくペプチド生成が促進される条件が異なることが明らかとなった。蒸発乾固法(蒸留水を加えてから、95℃の炉での乾燥の繰り返し)による実験系で、反応溶液のpHの影響を最も大きく受けたのはシリカであり、次いでヘクトライトであった。これらの鉱物を用いた系では、pH2〜3の酸性環境でペプチドの生成が促進され、シリカの系では7量体までのペプチドの生成が認められた。この結果は、同様の手法を用いた先行研究の結果を上回っていた。しかし、シリカをモンモリロナイトと混合した系ではシリカ単独の系ほどの促進は認められなかった。おそらく、吸着能力の高いモンモリロナイトに優先的にグリシンが分配され、この条件下ではそのモンモリロナイトの触媒効果が低かったためと推察される。一方、NaOHを用いてアルカリ性に調整して行ったすべての系で、メラノイジンと呼ばれる褐色の高分子が生成され、ペプチドの生成が阻害されていた。特にスメクタイトを用いた系でその傾向が強く、スメクタイトを用いた系ではpHを調整しない場合でも、初期のアミノ酸濃度が50mM以上でペプチド生成量が上回っていた。この性質はスメクタイトの触媒効果を考える上で非常に重要である。また水を加えず、反応系の相対湿度を制御して乾燥の程度を調整する実験では、ヘクトライトとγ-アルミナでペプチドの生成が非常に促進された。これらの鉱物は表面の湿度が低くなるほど、強い酸性を示す固体酸としての性質を有しており、表面の乾燥が進むとプロトンに作用しやすい性質を持つ。その働きがアミノ酸分子内のプロトンに影響し、活性化させ、ペプチドの生成を促したものと考えられる。
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