研究課題
水素は燃焼すると水だけが残り、二酸化炭素を放出しない環境低負荷のエネルギー資源である。水素をエネルギー資源として利用するためには、高密度にする必要があり、従来、低温によって液化する方法や、高圧によって高密度流体化する方法、水素吸蔵合金を作製する方法などが検討されてきた。しかしながら、これらの方法は目的物の製造や貯蔵に、また、水素の吸蔵/放出に大きなエネルギーを必要とする。近年、水素がメタンハイドレートと同様の包摂水和物を形成することが報告され、この包摂水和物の水素貯蔵媒体としての可能性が注目されている。水素の場合、分子サイズが小さいため、種々の氷多形構造の水分子ネットワークの間隙に入り込み、包摂水和物より高密度の水素吸蔵氷物質群が形成される可能性がある。本研究では、氷構造の水素吸蔵能力をいかし、氷構造の多様性を利用して高密度水素吸蔵氷物質(充填氷とよぶ)を作成し、それらの基本物性を明らかにし、水素エネルギー輸送・貯蔵媒体としての利用技術開発を行うことを目的とする。これまでの研究では、主に充填氷型水素ハイドレートの安定性やその原因に関する研究を行い、構造内に生じる特異的な相互作用が安定性を保証することを明らかにした。平成21年度は、水素貯蔵媒体としての利用を目指すため、低温・低圧領域での安定性を調べた。すなわち、実際に利用するには、圧力は低くなければならず、そのためには低温にする必要がある。生成した充填氷ハイドレートをダイヤモンドアンビル中で液体窒素温度下で1気圧まで圧力を開放し、その後温度を上昇させていく実験を行った。その結果、水素ハイドレートは一旦合成されると、1気圧下で260Kまで存続することが明らかとなった。これらの結果は、水素利用技術において、水素ハイドレートの貯蔵温度や貯蔵期間に対して重要な知見となる。
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http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/index.html