研究課題
萌芽研究
動物は、経験や環境変化に伴い、様々に行動を変化させることによって環境に適応して生存している。このような行動可塑性は、どのようなときに形成されるかが重要なだけでなく、維持される時間や新しい記憶により適切に消去されることも、適切な応答のためには重要である。本研究では、記憶の忘却や消去に関する分子メカニズムを明らかにするため、単純な神経回路を持つ線虫C.elegansをモデルとして、「記憶を忘れない」変異体の単離・解析を進めている。本年度は、「ブタノンエンハンスメント」をモデルとした解析を進めた。「ブタノンエンハンスメント」は、ブタノンと餌で刺激することにより、ブタノンに対するより強い走性行動を示すようになる行動可塑性で、連合学習の一種であると考えられる。条件付けを行い「ブタノンエンハンスメント」を示す線虫を、ブタノンがない条件で飼育すると、条件付け前よりブタノンに対する走性が悪くなり、90分後にはブタノンを避けるようになることがわかった。このことは、ブタノンエンハンスメントの記憶を消去するメカニズムがあることを示唆している。ブタノンエンハンスメントの記憶を忘れにくい変異体のスクリーニングを行い、90分後においてもブタノンエンハンスメントの記憶が残っている変異体を同定した。今変異体では、ブタノンに対する走性等には異常がないことから、ブタノンエンハンスメントの記憶を消去するメカニズムに異常がある変異体であると考えられた
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神経の分化, 回路形成, 機能発現(蛋白質核酸酵素2008年3月号増刊) Vol.53 No.4
ページ: 587-593