研究課題
動物は、経験や環境変化に伴い、様々に行動を変化させることによって環境に適応して生存している。このような行動可塑性は、どのようなときに形成されるかが重要なだけでなく、維持される時間や新しい記憶により適切に消去されることも、適切な応答のためには重要である。本研究では、記憶の忘却や消去に関する分子メカニズムを明らかにするため、単純な神経回路を持つ線虫C. elegansをモデルとして、「記憶を忘れない」変異体の単離・解析を進めている。我々が同定したジアセチルに対する嗅覚順応と塩走性学習の記憶を忘れにくい変異体qj56について、詳細な表現型の解析を進めたところ、ジアセチルに対する嗅覚順応の記憶は、野生型では数時間で失われるのに対し、qj56変異体では、24時間以上記憶が保持されることがわかった。一方、塩走性学習については、野生型では約10分で失われる記憶が約1時間保持されていた。このことから、この原因遺伝子は、異なるメカニズムで形成される記億の保持に関して、記憶の保持時間にかかわらず制御している可能性があることを示している。そこで、原因遺伝子の染色体上へのマッピングを行った。N2株と行動表現型が類似しているCB4858株の一塩基置換を用いたSNP法により、III番染色体中央付近の約200kbの領域にマッピングすることができた。また、ブタノンエンハンスメントの記憶の消去に関わると考えられる変異体についても、原因遺伝子の同定のためのマッピングを行いV番染色体にあることがわかった。
すべて 2008 その他
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http://www.biology.kyushu-u.ac.jp/~bunsiide/