本研究は、森林地下圏の微生物群集をモデルシステムとして、環境の不均一性が生物群集の構造と生態機能、ここでは物質循環に与える影響を、検討することを目的としている。森林生態系の根圏を支える土壌層では、A層、B層、C層、さらに基盤岩と狭い空間の中で環境要素が大きく変化している。それに対応して物理化学環境も狭い範囲で大きく変化している。また、根圏の有無などもこれに影響を及ぼすと考えられる。地下圏表層の構造上の変化の大きさは、環境に不均一さをもたらし、微生物はその不均一さの中で巧妙に分布しながら、その活性を発揮していると考えられる。このような場での水の流れは複雑であろう。そのような環境の中で、深林の地下圏では多様な微生物群が働く物質循環系が駆動し、系の安定性と地上部との有効な物質交換が成り立っている、といわれている。本研究では、このような異質な環境に微生物がどのように分布しているかを明らかにし、さらには、それらの担う生態系機能の空間的な配置を解明することを目指した。 19年度は、地下圏を直接観察するための技術開発を行った。地下圏の観察のため、直径40cmのアクリルのパイプを準備した。さらに、そこから、土壌間隙水を採取する方法、採集した標本から、バクテリア、真菌、担子菌を抽出する手法を確認した。これらの手法をもとに、20年度に目的の達成に向けて実験を行う。
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