本年度はウシガエルの分布境界に近い岩手県一関市の溜池を対象に、ウシガエルの分布決定要因の調査と、在来生物への影響評価を行った。多重ロジスティック回帰と情報量基準を用いたモデル選択の結果、ウシガエルの分布要因としては、溜池の連結性や標高といったマクロな要因が強く効いており、局所要因としては水生植物の存在が重要であった。一方、ウシガエル存在下ではトウキョウダルマガエルやツチガエルが減少し、またゲンゴロウ類やミズカマキリなどの大型水生昆虫も減少していた。しかし、アカガエルや小型水生昆虫類は減少が認められなかった。生物の体サイズや、移動スケールの大小でウシガエルによるインパクトは大きく異なることが示唆された。さらに胃内容物分析の結果、カエル類や陸生昆虫、クモ類が多数発見された。 昨年度の結果と合わせると、アメリカザリガニの存在はウシガエルを増加させ、多様な水生生物に大きな影響を及ぼすこと、また分布決定要因に溜池の連結性が強く効いていたことから、陸上を頻繁に移動すること、さらに野外実験で陸生昆虫類の減少が認められ胃内容物中にもそれらが多数存在することがわかった。以上の事実は、ウシガエルとザリガニの組み合わせは、生態系を横断する侵入溶融を引き起こしていることを強く示唆している。
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