本研究では、申請者らがこれまでに用いているシロイヌナズナの斑入り突然変異体var2を用いて、植物の葉が「斑入り」を形成するメカニズムとその意義を明らかにすることを目的とした実験を行う。特に野外などでみられる「斑入り」は植物の生存にとって有利にはたらくことを、病原細菌への抵抗性(あるいは抗菌性)で検討することが大きな目的である。 斑入りとは未分化のプラスチドを含む白色セクターと、正常に分化した葉緑体を含む緑色セクターが混在した状態を指す。これまでに申請者らは、var2の斑入り葉では緑色セクターの葉緑体特異的に多量の活性酸素種が蓄積していることを見出している。これら活性酸素種が直接的な抗菌作用や間接的な病害応答に役割を持つ可能性を評価するため、今年度はvar2にGFPを導入した病原細菌Pst DC3000を接種し、蛍光顕微鏡により細菌局在性を野生型と比較した。その結果、var2の白色セクターでは接種初期に強い蛍光が観察されたが徐々に減衰し、緑色セクターでは初期侵入も抑制されていた。また細菌増殖数測定の結果、var2は野生型に比べ僅かながらPst DC3000に対する増殖抑制効果を持つことが示唆された。var2の原因遺伝子VAR2は葉緑体局在型メタロプロテアーゼFts H2をコードしており、主に光化学系IIの修復サイクルに機能する。その遺伝子を欠損したvar2は光合成機能的には不利な形質を持つが、病害応答という観点においては利点となりうる形質であることが今年度の研究から予測された。
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