1.裸子植物(イチョウ、スギ、サワラ、コノテガシワ、アカマツ、マオウ)花粉管伸長過程の微細形態的解析:スギ、サワラ、コノテガシワ、アカマツの花粉管は分岐しながら珠心中を伸長するが、造卵器の形成に伴いその中の一本が花粉管核、柄細胞、中心細胞を造卵器まで運搬し、他の花粉管は伸長を停止することが明らかになった。また、花粉管伸長に伴い細胞死した珠心細胞の液胞ではオートファジーがおこることが加圧凍結固定法により明らかとなった。細胞死に伴い液胞は貯蔵型から分解型に変化し、細胞内容物を分解することが示唆された。 2.被子植物の花粉管伸長に関与する物質群(デンプン、ペクチン、アラビノガラクタンタンパク質(AGP))の裸子植物における局在:裸子植物花粉管の通路となる珠心細胞間隙および細胞壁における物質群の動態を解析した結果、すべての材料でメチルエステル化ペクチンが、またアカマツ以外の植物で脱エステル化ペクチンが検出された。AGPはスギ、サワラ、アカマツ、コノテガシワで局在したがイチョウ、マオウでは見られなかった。珠心細胞内でのデンプンの蓄積はアカマツ、コノテガシワで広範囲に多量であったがスギでは部分的、イチョウ、サワラ、マオウではほとんど見られなかった。花粉管伸長と物質群の消長・分布には種による多様性があることが示唆された。 3.花粉管内Ca^<2+>の濃度測定:Fluo-3を用いアカマツ花粉管におけるCa^<2+>濃度の解析を試みた。分岐した花粉管の間にCa^<2+>濃度の差は認められなかったが、染色剤の選択や染色方法に検討の必要性があり今後の課題とする。 裸子植物の生殖機構は被子植物に比べ不明な点が多い。花粉管の多様性、また周辺組織との相互関係の解析から裸子植物さらには種子植物全体の生殖機構解明に大きく寄与すると期待される。
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