研究概要 |
本年度の当該申請研究の実績は以下の点に集約である。 1、屋久島産Vestalenula corneliaの湧水個体群の齢構成を月ごとに詳細に調べ,前年度と合わせて2年間のデータを得た。これにより卵の保有期,ふ化の時期,成長期,成長の停止期などの個体群生態を世界で初めて解明した。この結果,Vestalenula corneliaがDarwinula上科の他の貝形虫(Darwinula stevensoi)と極めて類似した個体群生態を有することが確認された。これはV.corneliaが特別な個体群生態を有する為にオスが見つかったのではなく,他のDarwinula上科貝形虫からもオス発見の可能性のあることを示したと考えられる。 2、Vestalenula corneliaの幼体・成体の殻表面の感覚子の数と分布パターンを詳細に調べ,一見したところサイズと外形がメスの幼体殻に類似するオスの殻が,実はメスと同じ感覚子の数と分布パターンを持つことを確認した。すなわち,軟体部がなくても(殻だけでも)オスの識別が可能なことが判明した。この結果は保存の良い化石種や化石標本があれば,過去の地質時代にオスが存在したかどうかが調査可能なことを示している。 3、以上の2点の成果をまとめ,9月にドイツ・フランクフルト、ゼンケンベルグ博物館で開催された第6回ヨーロッパ貝形虫研究者会議で発表した。また論文を学術誌Senckenberigiana letheaに投稿し,受理が認められた。 4、Vestalenula corneliaのDNA解析を進め,いくつかの領域のDNAの増幅に成功した。これに基づき,有性生殖の有無の確認をさらに継続して検討している。
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