細胞内に存在するタンパク質の多くは、様々な機能モチーフを介した他タンパク質との相互作用あるいは機能モチーフの翻訳後修飾などによってその細胞内局在や機能が制御されている。本研究では、癌抑制因子PICT-1を題材として、ランダム変異導入と蛍光セルソーター(FACS)によるソーティングを組み合わせたハイスループットなスクリーニング系によって、その細胞内動態(ストレス依存性のPICT-1分解および核(核小体)移行)を制御する機能モチーフを決定することを目標とした。本年度の研究では、(1)EGFPをPICT-1のN末端側およびC末端側に結合した融合タンパク質が野生型PICT-1と同様に様々なストレスに応答して分解されること、および(2)これらの融合タンパク質の細胞内局在も野生型と同様に核小体に限定されることを検証し、これらがモチーフ解析に利用できることを確認した。また(3)これらのコンストラクトに対するError-prone PCRによってランダム変異を導入する系を確立した。なお当初スクリーニングに用いる予定であったEGFPをC末端側に結合した融合タンパク質(PICT-1-EGFP)が極めて強い細胞毒性を示したことから、スクリーニングにはEGFPをN末端側に結合した融合タンパク質(EGFP-PICT-1)を用いることとした。これに伴い、ランダム変異によるフレームシフト・ナンセンス変異の導入を忌避するために、「PICT-1-Kan^r」コンストラクト等を用いた変異導入系の確立が新たな検討課題となった。なお、PICT-1-EGFPが示す細胞毒性の理由は不明であるが、その解明が進めばPICT-1の機能解析に新たな展開が望めると考えている。
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