軸糸外腕ダイニンが、ドッキングコンプレックスによって生体内と同様24nmの周期で2本の微小管を架橋するような系の開発を目指して、ホヤの軸糸外腕ダイニンを用いた研究を開始した。ホヤ軸糸外腕ダイニンについては、筑波大学の稲葉研究室の協力により調製し、ドッキングコンプレックスを含むことを確認した。これを微小管と混合して、ネガティブ染色電顕法によって観察したところ、部分的に規則的結合が見られたが、微小管に結合せず凝集してしまっているダイニンも多かった。また、得られた少数の規則的結合部の画像を切り出してフーリエ変換したところ、ドッキングコンプレックスを含まないウニのダイニンを用いたときと同様、周期は21〜22nmであった。これは生体内における24nmの周期とは異なるように見えるが、まだ少数の画像からの情報であるので、今後確認する予定である.得られた複合体については、低温電子顕微鏡法による観察を開始したが、規則的に2本の微小管を架橋しているダイニンの割合が低いため、現在は、より観察に適した条件を検討中である。 一方、クラミドモナスのダイニンをもちいた過去の研究では、微小管重合時に粗精製のダイニンを加えることによって規則的な結合が得られることが報告されている。そこで、ホヤの粗精製のダイニンを加えて微小管を重合し、ネガティブ染色電顕法で観察したが、ダイニンの結合があまり見られなかった。ネガティブ染色時にダイニンが解離する可能性を考え、グルタルアルデヒドで化学固定した後にネガティブ染色電顕法にて観察したところ、一部において2本の微小管が、規則的な配列をしたダイニンと思われる物質に架橋されて2重らせんを形成している構造が見られた。現在、化学固定なしで規則的な配列が得られる条件を検討中である。
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