昨年度、受精直後の初期胚でオートファジーが活性化することを見いだし、この時期オートファジーが不能となる卵特異的Atg5ノックアウトマウスでは胎生致死となることを明らかとした。本年度は、このマウスをさらに解析し、初期胚での完全オートファジー欠損は4-8細胞期の致死となること、この胚ではタンパク質合成が低下することから初期胚は自己タンパク質分解によって生じたアミノ酸を新規タンパク質合成の材料としていることが示唆された。一方、卵特異的ノックアウトマウス由来の卵子でも、野生型精子と受精すれば産仔が得られたため、受精後のオートファジーが重要であると考えられた。しかし、産仔数は予想された数より少なかった。またその傾向は年齢が進むにつれてより顕性化した。これらのことは、オートファジー不能卵は排卵時にすでに機能が損なわれている可能性を示唆した。そこで、他の組織と同様にオートファジーが卵細胞の品質管理に関与している可能性を考え、卵特異的ノックアウトマウスの卵を解析したところ、ユビキチン抗体で染色されるタンパク質凝集体と考えられる構造体が蓄積していた。これらはp62抗体によっても染色された。同様の構造体は野生型老齢マウスの卵においても検出されたため、生理的条件下でも蓄積しうるものが、オートファジー欠損によってより早期に観察されたものと考えられた。したがって、長期に維持される卵細胞においてもオートファジーは品質管理機構として重要であることが考えられ、今後不妊等との関連が注目される。
|