研究概要 |
本研究では、発生と進化の関係性を説明した発生砂時計モデルの検証を目標としている。発生砂時計モデルでは、脊椎動物の発生中期には拘束の強い、進化的に最も保存されたファイロティピック段階と呼ばれる胚段階が存在するとされている。これまで我々は、これまでにマウス胎仔の発生段階別ESTデータを用いて、vertebrate ancestor indexを算出し、その値がもっとも高くなるステージをE8.5前後とした。本年度は、マウス胎性7.5, 8.5, 9.5, 10.5においてより高い精度での遺伝子発現情報を得るため、マイクロアレイを用いて網羅的な解析を行った。また、公共の各種(ゲノム、GeneOntologyなどの)データベースから最新の情報を取得し、大型計算機により様々な生物種の配列情報を解析することで、マウス胚発生において進化的に保存された胚段階の解析を行った。これによりマウス胎性8.5日から9.5日にファイロティピック段階が存在しうるという、これまでのESTによる解析結果と矛盾しない結果を得た。また、原始脊椎動物が起こしたと考えられるボディプランの大きな変革が、胎性8.5-9.5日に痕跡として残っている可能性も示唆された。これらの結果は、発生砂時計モデルをゲノムレベルで支持するだけでなく、当該分野において分子レベルでの新たなアプローチの有用性を示すものである。
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