本研究では、タンパク質や遺伝暗号の初期進化の可能性に関する「実験進化学」的アプローチを試みるとともに、「20種類よりも少ないアミノ酸からなる限定された配列空間を探索する」というアイデアが、新しい機能タンパク質の効率的な探索法として有効か否か検証することを目的とする。 まず、コドンの2文字目と3文字目の塩基をN(4種類の塩基の混合)とし、コドンの1文字目の塩基をGまたはAに限定した合成DNAを用いて、12種類のアミノ酸からなるランダム配列ライブラリーを作製した。このとき、ランダム配列の下流に付加したFLAGタグを利用して、mRNAディスプレイ法によるプレセレクションにより、ランダム配列ライブラリーから終止コドンを含む配列を除去した。このランダム配列DNAライブラリーからmRNAディスプレイ法により1012種類の配列を含むタンパク質-mRNA連結分子ライブラリーを作製し、ビーズに固定した低分子化合物に結合するタンパク質を試験管内選択した後、逆転写PCRにより遺伝子を増幅し、次のサイクルの鋳型とした。この試験管内選択のサイクルを数回繰り返したが、標的分子に特異的に結合するランダム配列タンパク質遺伝子の濃縮は見られなかった。 そこで、次善の策として、天然の機能ドメインの約半分を上記ランダム配列カセットで置換したライブラリーを作製し、元の標的分子への結合能をもつタンパク質の試験管内選択を行った。その結果、アミノ酸の種類を限定した場合と20種類すべてを用いた場合とで、ほぼ同程度の機能配列を含んでいることが示唆された。
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