ストレスに対する植物の応答機構の解明は、ストレスに強い作物の作出のための重要な基盤となる。ゲノム情報が整備された現在、タンパク質を網羅的に解析するプロテオミクスは、ストレス応答機構を解明する上で有効な情報を発信してくれるものと期待されている。しかしながらプロテオーム解析では、ストレス応答機構の鍵となるような微量タンパク質の検出という点では問題があることが指摘されてきた。本研究ではこの問題点を解決する手立てとして、アフィニティーカラムクロマトグラフィーを用いて存在比率の高いタンパク質を除く手法(prefractionation)を採用し、植物のストレス応答機構に関与する微量タンパク質を網羅的に解析できるシステムを確立することを目的とした研究を行っている。平成19年度は、一本鎖DNAアフィニティーカラムを用いて、イネの乾燥種子中のタンパク質についてプロテオーム的解析を行った。その結果、複数のRNA結合タンパク質の検出と同定に成功した。すなわちこの手法を採用することにより、RNA結合タンパク質のような微量タンパク質でも網羅的に解析できることを実証できた。さらに、これらのRNA結合タンパク質のうち2種(pRBPおよびGRPと命名)は、シロイヌナズナのRNAシャペロンと相同性が高いこと、発芽時に吸水すると減少すること、およびこの減少は低温ストレス条件下では起こらないことなどが明らかになった。一方、リン酸化タンパク質を特異的に分取できるQiagen社のPhospho Protein Purification Kitのカラムを用いた解析でも、ストレス応答に関わるリン酸化タンパク質の同定に成功しており、現在さらに詳細な解析を継続して行っている。
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