本研究は、プロテオーム的手法を用いて植物のストレス応答機構についてタンパク質レベルで解明することを最終的な目的としている。しかしながら、従来のプロテオーム的手法ではストレス応答機構で重要な役割を担う微量タンパク質の検出が困難であるとの指摘があった。この問題点を解決するために昨年度の研究では、アフィニティーカラムによって存在比率の高いタンパク質を取り除いた後に微量タンパク質を解析するプロテオーム的手法を確立した(prefractionation法)。特にDNAアフィニティーカラムを用いた解析では、イネ種子からRNAシャペロンタンパク質(pBRPとGRPと命名)の検出に成功した。そこで20年度は確立したプロテオーム的手法を用いてpBRPとGRPの種子中での消長に着目した解析を行った。その結果、(1)この手法がpBRPやGRPをはじめとした複数の微量タンパク質の解析に適していること、(2)pBRPとGRPは極度に乾燥する時期に蓄積すること、および(3)発芽時のpBRPの変動にはジベレリンが関与することなどが明らかになった。これらの知見は、乾燥ストレス応答機構におけるRNAシャペロンタンパク質の生理機能を解明する上で極めて重要となる。さらにイネ以外の植物種の解析についても確立したプロテオーム的手法を適用ところ、水ストレスを受けたメロン(マクワウリ)の子葉では、ストレス応答に関与すると考えられるDNA結合性タンパク質が複数見出された。これらのことはprefractionationを組み入れたプロテオーム的手法が微量タンパク質の網羅的解析に有効であることを示している。現在、本研究成果を基盤として植物細胞の老化における微量タンパク質の解析にも着手したところである。
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